膝や股関節、肩などの関節痛にお悩みの方にとって、ヒアルロン酸注射は痛みを軽減し、関節の動きをスムーズにする有力な治療法です。ここでは、ヒアルロン酸注射の仕組みやメリット・デメリット、治療の流れなどを患者さん向けにわかりやすくまとめました。
1. ヒアルロン酸注射とは?
ヒアルロン酸はもともと人の体内にある成分で、関節内では潤滑油やクッションのような役割を担っています。関節の軟骨がすり減ったり、炎症が起こったりすると、ヒアルロン酸の量が不足して関節の動きが悪くなり、痛みや腫れの原因となります。
そのため、不足したヒアルロン酸を直接関節内に補充することで、以下の効果が期待できます。
- 関節の動きをなめらかにする
- 摩擦や衝撃を和らげる
- 関節内部の炎症を抑え、痛みを緩和する
2. ヒアルロン酸注射の主な対象疾患
- 変形性膝関節症
膝の軟骨がすり減ることで痛みや腫れが生じる疾患。高齢者に多いですが、若年者でもスポーツでの酷使やケガによって発症するケースがあります。 - 変形性股関節症
股関節の軟骨がすり減り、痛みや可動域の制限が生じます。運動や歩行が困難になることも。 - 肩関節の障害
五十肩や肩関節周囲炎、腱板損傷などで肩の動きが悪く、痛みがある場合に検討されることがあります。 - リウマチなどの炎症性疾患
関節リウマチなど自己免疫の影響で関節に炎症が起こる際、補助的な治療として用いられる場合があります。
3. ヒアルロン酸注射のメリット
- 関節の潤滑と痛みの軽減
ヒアルロン酸を補充することで、関節内の摩擦が軽減され、痛みがやわらぎやすくなります。 - 副作用が少ない
内服薬と比べて、局所的に関節に投与するため、全身性の副作用が少ないといわれています。 - 日常生活の質(QOL)の向上
痛みが軽減されることで、歩行や家事などの動作が楽になり、外出もしやすくなるなどQOL向上が期待できます。 - 手術回避や先延ばしができる可能性
痛みを抑えることで、必要に応じて手術を回避したり、先延ばしできる可能性があります。
4. ヒアルロン酸注射のデメリット・注意点
- 即効性はやや弱い
ステロイド注射に比べると、強力な炎症抑制作用はありません。効果を感じるまでに数回の注射が必要なことが多いです。 - 継続的な治療が必要
一度の注射で長期間効果が持続するわけではなく、通常1~2週間に1回程度のペースで複数回の注射を受けるケースが多いです。 - 痛みや腫れの増強
注射による刺激で、一時的に痛みや腫れが強まる場合があります。数日で落ち着くことが大半ですが、続く場合は医療機関に相談してください。 - 感染リスク
関節内に注射を行うため、ごくまれに感染が起こる可能性があります。医療機関では徹底した消毒を行いリスクを最小限に抑えていますが、注射後に強い痛みや発熱を感じたら早めに受診しましょう。
5. ヒアルロン酸注射の治療の流れ
- 問診・診察
医師が痛みの程度や生活状況、既往歴などを確認し、必要に応じてX線などの画像検査を行います。 - 注射部位の消毒・局所麻酔
感染を予防するため、注射部位をしっかりと消毒。痛みが心配な方には局所麻酔を使用する場合もあります。 - 注射
超音波(エコー)やレントゲンで正確な位置を確認しながら、ヒアルロン酸を関節内に注入します。 - 安静・経過観察
注射後は数分~数十分ほど安静にして痛みや腫れの様子を確認します。注射当日は激しい運動や長時間の外出は控えたほうが安心です。 - 継続的な治療・フォローアップ
通常は週1回程度、5回連続で行うケースが多いです。症状や効果の持続を見ながら、医師と相談して治療プランを決定します。
6. ヒアルロン酸注射を受ける際のポイント
- 無理な運動を避ける
注射当日や翌日はできるだけ安静を心がけましょう。ウォーキングや軽めのストレッチなどは、医師の指示を仰いで徐々に再開します。 - 定期的な通院
痛みがなくなっても定期的なフォローアップが大切です。症状の再発や悪化を防ぎ、最適なタイミングで注射を行うことが重要になります。 - 食事・生活習慣の見直し
体重管理や適度な運動は関節への負担を減らすために効果的です。バランスの良い食事や筋力トレーニングも検討しましょう。 - 併用療法の検討
必要に応じて、**リハビリテーション(理学療法)**やサポーターの使用、内服薬などを併用することでより効果が得られる場合があります。
7. まとめ
ヒアルロン酸注射は、関節に必要な潤滑成分を直接補給することで、関節の動きを滑らかにし、痛みを緩和する治療法です。ステロイド注射ほどの即効性は期待しにくいものの、副作用が少なく継続的に治療できる点がメリットです。
膝などの関節痛でお悩みの方は、まずは整形外科などの専門医に相談してみましょう。自分に合った治療法を見つけることで、痛みの軽減だけでなく、日常生活の質(QOL)の向上が期待できます。